2016年6月4日土曜日

最近のプラトー

先月末から、特許翻訳で初めて、シリーズ案件を担当しています。


これは、類似案件を同じ翻訳者が対応する、というもので、最初の案件を納品した後に、メモリを会社の担当者が移し替えて、二本目以降の案件を送付する、となんですが、



これはこれで難しい…



何が難しいのかという、まずは訳文の統一。


最初の案件を納品した後、次の案件を翻訳していると、微妙に語順とかが入れ替わってしまうわけです。「前はこういう風に訳したけどな~、こっちのほうが語順はいいのかな…」とか、思ってしまうわけです。


もちろん、どれをとっても間違い、というものではないので、傍目からするとどっちでもいいと思われるんですが、一応「シリーズ案件は表現を統一」と言われているので、その整合性というか統一感をどうするか、というのは、個人的にすごく悩みます。


あと、これは今回に限ったことじゃありませんが、既訳部分との表現の微妙な違い。unless otherwise indicatedとかの「テンプレート」の訳でも、人それぞれ微妙に異なってくるわけですし、既訳分を見ていると「こういう表現は自分は使わないかな…」と思う時もあって、そのあたりの修正やら統一感についても、また悩む。


そして、「熟れた表現」の難しさ、という曖昧さ。自分は「A及びBを含む組成物」という表現がしっくりくるのでそう訳すけど、チェック案件に目を通していると「AとBとを含む組成物」という表現が多く使われていて、そっちのほうがいいのかな…という、変なところへの悩み。


(こういうことについては、先方から「この企業はこういう表現で」ということも言われていないので、恐らくどっちでもいい気がしますが、やっぱり気になってしまう性分なんですよね。)




でまあ、こういうことでうんうん唸っていると翻訳のリズムも狂ってくるので(木を見て森を見ず状態になる)、深入りは避けていますが、



こうなってくると、指定のツールもなく、既訳部分のディスカウントもない「自由演技」でできる取引先のほうが、仕事はやりやすいな、と思います。レートの問題もありますが、「自由演技」の場合、「メモリのディスカウント」がない、ということよりも「自分の語感にしっくりくる訳文を作れる」ことのほうが、メリットが大きいと思っています。やっぱり、自分だと作らないようなてにをはの順序とか句読点の有無とかがあると、臓器移植状態じゃないですけど、自分の外にあるものと中にあるものとの整合性を付けるのに、微妙な感覚が狂ってしまうんですよね…



あと、今幾つかチェック案件も担当していますが、


本当にひどいミスをする人もいるんだなあ、というのが率直な感想。しかも、そこそこの会社の翻訳なので、こういう会社にもこういう人が登録されているのか…ということに驚いています。


しかも、「これは意訳なんじゃないのか?」というぎりぎりのコースを突いてくる(苦笑)割に、訳抜けだったり誤字が沢山あって、「やっぱり、熟れた表現云々を言うより、多少硬くても正確な表現で、基本的なミスはなくそうぜ」って、突っ込みたくなります。(もちろん、勉強になる部分も沢山有りますが)



こういう人の訳文を見ていると、統一感とか細かい語感とか、或いは「この原文ってマズくないかな」というところでいちいち悩んでいる自分は一体何なんだ…とか思ってレベルが下がりそうなので、やっぱり、自分よりレベルが少し上の人達とずっと付き合い続けないとダメですね。









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