2016年3月27日日曜日

カーボンナノチューブあれこれ





この本を最近読んだんですが、

一番感動したのは、52ページ辺りで説明されているナノチューブの分離方法。


合成ナノチューブは色んな直径が混じっている等、成分が均質ではなく、
それらを分離することは不可能と考えられていたが…



そこで、ナノチューブ(一般的に疎水性)に界面活性剤を付与して水に溶けるようにするのだが、

この時に、金属ナノチューブにつきやすい界面活性剤と、半導体ナノチューブにつきやすい界面活性剤を用いて、前者の密度が後者より大きいことを利用して、遠心分離でこれらのナノチューブを分離することに成功した、


という話でした。


(ちなみに、これを密度勾配遠心分離という)



こういう、密度が同じだったり大きさが不統一で分離できない材料に、性質が異なる物質をくっつけて、その差を利用して分離する、という流れに感動しました。



こういう、自然作用や原理を組み合わせて何か新しい結果を得る、という話を聞くと単純にすごいな、と思います。


そして、この話を読んだときに頭に浮かんだのが、マクマリー有機化学(上)でさらっと紹介されていたキラル化合物の分離方法で、これは、キラルな化合物に別の物質を化合させて、ジアステレオマー(ここでは、ジアステレオマー塩)を作製して、それらの性質の違いを利用して分離する、という話でした。

ナノチューブでは、「異なる界面活性剤」を用いて、キラル化合物の分離では「同じ物質」を化合させているので、厳密に言うと同じではないのでしょうけど、自分としては


似たような性質のものに何か別のものをくっつけて違いを際立たせて分離する


という発想が同じに思えて、シンクロしました。


こういう瞬間があるから、この仕事は面白いですし、もっとすごい世界を覗いてみたい、と思って心が奮い立ちます。

(ただ、仕事でこういう感動をまだあまり味わえていないのが、自分の実力)



そんなわけで、今日は少しカーボンナノチューブについて調べてみたのですが、製造方法を調べてびっくり。まさかの、半導体で用いられるレジスト技術を用いるようです。




ここで説明されている通りなんですが、


基板に絶縁膜を形成してレジストを塗布。

この基板上に触媒金属を蒸着させて、レジストを除去。

そしてこの後、カーボンが含まれるガスを注入して温度を上げると、触媒があるところだけに炭素が作用して生長し、カーボンナノチューブができる、という仕組み。


まさかのレジスト技術がこんなところで使われていて、ここ数日でアハ体験を何度もすることができました。





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